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スタッフ

■杉島邦久氏 第二弾
『スピードグラファー』で杉島監督らしさが出ている部分はどこですか?
  「キャラクターの性格付けは、ほとんど私が決めましたし、車だったり小道具だったり、そういった世界観に関わる部分の提案をしています」
脚本には、車の名称まで具体的に書かれていますね。
  「やっぱりバブルっていう、拝金主義の世界観というところから始まっている作品なので、そこをちゃんと設定に反映させなければなりませんよね。設定のスタッフは大変になってしまってるのですが、そういうところはこだわってます」
小道具というと具体的には?
  「ライターとか煙草、お酒、そういう小さいものまで全部。これはこれでなきゃヤダみたいな」
銘柄まで指定して?
  「そうそう。目覚まし時計一つとっても、これでないとダメとか。全然地味で目立たない部分までこだわっています」
『スピードグラファー』の場合、そういう部分は大事ですよね。
  「その辺を言うイイ加減にしちゃうと、物語そのものが現実離れしている分、世界観までウソくさくなってしまうんです。非現実の話が、非現実の世界で展開する、ということだと視聴者としては全然捉えどころのない作品になってしまう」
フェチ怪人たちに経済用語であるユーフォリアという名称を付けたのも監督だそうですが。
  「そうです。フェチ怪人たちの持っている特殊能力というのは、説明抜きで摩訶不思議な力、ということにするしかないかな、とも思っていたんですけど、やっぱり理屈は必要だろうと」
ユーフォリアたちは自分のフェチの対象そのものに同化してしまった存在ということですよね。
  「フェチズムにおいては、フェチの対象と自分が同一化してしまうことが究極の快楽なんだという話がありまして……。そういう欲望が特殊な能力を呼び覚ます呼び水になるという設定ですね。心からの欲求として『何かが欲しい』とか『何かになりたい』と念じる心……例えば、キリンが高いところの葉っぱを食べないと死んでしまうから食べたい! ということで首が長くなったりという、そういう進化の仕方を、何代もかけないで一代で自分の体が変化させてしまうという」
なるほど。あれはある種、進化だったんですね。でも、ユーフォリアは哀しい存在としても描かれているんじゃないですか?
  「うーん。哀しいのかな。哀しくはないんじゃないかな。ある種幸せ。ユーフォリアになっちゃうことで、本人は快楽の極地に行ってしまっているから。一般人の目から見たら、あの姿は物悲しいものがあるのかもしれないけど、彼らにとってはそれほど哀しいことではないのかもしれない」
むしろカッコイイかも……。
  「一つのフェチズムに特化した人たちのことを色々調べて思ったのは、フェチを持っている人たちと、そうでない人とが話すと会話にならないということなんですよね。えっ、それは普通じゃないよ、ということが彼らには常識としてあるんですよ。だからメンタリティがまったく違うというか、異星人と話している感じで会話にならない。だから彼らのことは、本当のところはまったくわからないんですよね。最初は理解しようとしたんですけど」
わからないことは、わからない、と。
  「そうですね。わからないことを、わかっているかのように描いてはいけないと思うんです。だから、この作品に出てくるユーフォリアというのは、えーっ? こいつら訳わかんない。あり得ない! っていうようになっている。それは、ユーフォリアというものが、私たち自身にわからない存在だからなんですよ」
なるほど。理解しあえなくても、それでいい、と。
  「神楽がダイヤモンド夫人に向かって『お金より大切なものがあるんじゃないですか?』って訊くんだけど『ないわ』っていう一言で片付いていしまう」
むしろ、そう言ってくれたほうがスッキリしますよね。
  「二人の間には理解できるものは無いんだけど、確固たる確信が彼女にはあるっていう」
監督自身はお金より大切なものってあると思います?
  「うーん。あるんじゃないですか? あると思いますよ。お金がないと現代社会では生きていけませんけども、お金がすべてではないと思いますよ」
じゃあ、お金以外に何があるんでしょう? 実はそこが『スピードグラファー』という作品のテーマにもなってくるんじゃないかという気がしますけれども。
  「うん。そうですね。この作品のテーマは、お金じゃない価値観っていうのは、一つじゃなくて色々あります、みたいなことかな。それは、それぞれ一人一人違うと思うんです。相対的なもので」
雑賀には雑賀の。神楽には神楽の価値観がある。
  「そうですね。逆説的に水天宮なんかも金の亡者的な描き方をしていて実は……ってところもありますからね」
インタビュー・構成:サガラノブヒコ
>>第3弾へ続く・・・

 

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