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スタッフ

■杉島邦久氏 第三弾
今の若い人たちって、戦後からバブル時代の価値観っていうのは、胡散臭いと気づいている人沢山いる思うんです。だけど、それに変わる自分なりの価値観を持っている人たちがいるかというと、そうでもないんじゃないですか?
  「そうですね。こう、何でも物事を客観的に見ちゃってるというか……。冷めた感じで、第三者視点というか、自分の目で見ないで、このあたりから……。既成の価値観に代わる価値観っていうのを自分で提案していくというよりも、価値相対主義的なところで逃げちゃってる気がしますよね」
スピードグラファーの登場人物っていうのは冷めてないですね。
  「冷めてないし、熱いですよ」
作画的にもアクティブに登場人物が動き回りますね。
  「人間のドロドロした部分を描かなくてはいけない作品でもあるのですが、見せかたとしては、あんまり陰鬱とした作品になるのはイヤだったんです。やっぱり作品としてはエンターテイメントであるべきだと思いますので。世界観がドロドロしてるから、キャラクターまでドロドロしているということでは、本当に救いようがなくなってしまうので。とにかくキャラクターには、突っ走れって。イヤな感じにならないように気を使って」
キャラクターたちを動かしてるモチベーションって何なんでしょうか。
  「近頃巷を騒がせていた、企業間の買収話とか、郵政民営化の議論だとか、やってる本人たちっていうのは、それほど高尚な理念に基づいてやっているとは思えないですよね。もっと違う、ドロドロとした、人間の根源的なものに突き動かされてやっているんじゃないかなあ、っていう。そういうところを『スピードグラファー』では、割と皮肉っぽく描いてるんですよ。秘密倶楽部を自分たちのものにしようとしてる政治家とかで。それが作品の前面に出ているわけではないんだけども。それを裏の部分でテーマにしている」
ところで杉島監督が演出家として一人立ちしたのはテレビシリーズの『機動戦士Zガンダム』だったそうですね。その頃というのは、世の中的にはバブル前夜だったわけですが……。
  「ええ。バブルが始まった頃ですね」
『スピードグラファー』の視聴者の中でも、若い世代はバブルという時代を、あまりよく知らないと思うのですが、どんな時代だったんでしょうか?
  「うーん。まあ、私もアニメ業界にいたので、バブルの直接的な恩恵には与っていたわけではないんですけど……。でも、社会全体が、非常に浮かれてましたよね。なんだろう? ずーっとコンパをやっているというか。ずっと宴会をやっている感じ」
監督は、そういう世の中を一歩ひいて見てたんですか?
  「いや、収入的にはおいしい目にはあってないですけど、そういう世の中には参加したいじゃないですか。流行ってるものとか、そういうことには敏感でしたね。もともと私は、アニメのことを何も知らないでこの業界に入ってきてしまったので、だから、ずっとアニメを勉強してきて、この業界に入った人と比べると、スタートラインから出遅れてしまっていたんです。だからそういう人とは別の、アニメに対して自分なりの切り口みたいなものを作らないとダメだなと思って……。だったら世相に敏感な演出家になったらいいんじゃないかって考えて……。単なる言い訳なんですけど(笑)。ただ遊びたいだけでした。で、お金もないのに夜の巷に繰り出してっていう」
じゃあ、監督がユーフォリアになってしまうとしたら、どんなユーフォリアになるんでしょうか?
  「うーん……。最近、昔ほど色々なことに、こだわりはなくなってきてるんだけど、ライフスタイルで未だに譲れない部分っていうのは、車ですね。恐らく、ヨーロッパの変な車を買わなくなったら周囲には『杉島、落ちたり』と言われるんじゃないかな」
じゃ、変な車怪人になるわけですね。
では最後に『スピードグラファー』ファンにメッセージを。
  「深夜、遅い時間に放送していますので、起きて観ているのは大変だと思います。ですが、観る余裕のある人は、ぜひ、リラックスして、のほほんと観ていただくもいいですし、シナリオには色々な伏線を張ってありますので、そこを深読みしながら観ていただくのもよし、こいつらなにやってんだ、バカだなあ! なんて言いながら観ていただくもよし。色んな観かたができる作品だと思いますので、とにかく楽しんでいただければと思っております」
笑っていいんですよね?
  「もちろんです。ええ。突っ込み所満載なので、笑っていただいて全然構わないんですよ」
大いに楽しませていただきたいと思います(笑)。
インタビュー・構成:サガラノブヒコ

 

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