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RED GARDEN全話を考察!
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第1回 ゴシックホラーの末裔

 突然、「生きる屍」と化した四人の少女が、もとの身体に戻ることを条件に、ニューヨークに跋扈する「怪物」と戦う異色のTVアニメ『レッド ガーデン』。ミステリアスな運命の中で友情が結ばれ、絶望と希望が同居するその不思議な作風は、一度観たら続きが気になって病みつきになる。彼女たちが死の恐怖の中から「生の真実」に目ざめていくプロセスとともに、観客もまた未知なる感興を覚えていくはずだ……。
 本コラムではこの斬新な魅力をもつ作品をより深く楽しむため、ガイドとなるいくつかの補助線を引いて魅力の真髄に迫っていきたい。まず、最初はこの不思議な作風のベースになったと思われる「ゴシックホラー」について、作品に関連づけて語ってみよう。
 「人でありながら人であらざる者たち」が『レッド ガーデン』の中心にある。生と死が逆転したり不安定になった情況の中から、主人公たちが「ほんとうのこと」をつかんでいく展開……それは「ゴシックホラー」の文学的伝統にもとづいた作法を、現代なりに消化して新たな魅力に置き換えたものとも見ることができる。
 その伝統とは、いったいどのようなものなのだろうか?
 「ゴシックホラー」はちょうど18世紀末から19世紀初頭、つまり今から200年ほど前に欧州で書かれたロマン主義小説のジャンルである。後に盛んに転用された「吸血鬼」や「狼男」あるいは「フランケンシュタインの怪物」など代表的なモンスターたちは、このジャンルから誕生したものが多い。さらには、SFやミステリー、ホラーというジャンルそのものが共通してもつ「謎」や「恐怖」の潮流をさかのぼれば、すべてこのゴシックホラーにたどりつくとまで言われている。
 『レッド ガーデン』という作品も、主人公たちが「生きる屍」である設定や、彼女たちが戦っている相手が「人が人でないものに変わった存在」であることなどに関し、「ゴシックホラー」の系譜に直結していると思える要素を多く前面に出している。
 そもそもなぜ「ゴシック」と呼ばれたのか? それは、古城や修道院の廃墟など、ゴシック建築を舞台にすることが多かったからだ。「ゴシック」とは本来は「ゴート人の」という意味で、「ゴシック小説」が書かれた時点ですでに「過去の因習」を象徴するものであった。その過去が謎となって今に現れ、害意を示して「ギリギリの恐怖」を与える。この対決こそが「人間性の根源」を浮き彫りにするものとされていたのだ。
 この姿勢は、『レッド ガーデン』にも通じているように思える。舞台は現代文明の最先端と思われている大都会ニューヨークなので、ゴシック建築とはすこし遠そうにも思える。だが、北米大陸の東海岸とは実は欧州から移民が始まった地域。あえて欧州からの伝統を強く引きずっている場所が選ばれているのだ。これは偶然とは思いにくい。
 このように考えると、『レッド ガーデン』という作品は、斬新なキャラクターや独特の演出技法を駆使しながらも、2世紀にわたって連綿と描かれ続けてきた「人間性の根源」に迫っていこうとしているものと思えてくる。こうした考察を手がかりにして、作品の描き出すさまざまな魅力について、次回以後も掘りさげてみたいと思う。 (以下、次回)
(以下、次回)



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氷川竜介

経歴:アニメ特撮評論家
・雑誌連載『ガンダムエース』『スカバー!ガイド』『特撮ニュータイプ』
・バンダイチャンネル:Webとメールマガジン、特集、みどころ紹介。
・ガンダムSEEDクラブ:コラム連載
・フレッツスクエア『機動戦士ガンダム』あらすじ、コラム
・DVD『機動戦士ガンダム』公式ホームページ あらすじ






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