――物語の構想は、まずどういったところから思いつかれたのでしょう? |
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岩永亮太郎(以下、岩) 以前から刑事ドラマが大好きだったこともあって、組織を描きたいと思ったのが、そもそもの動機です。単なる勧善懲悪モノとしてではなく、社会の仕組みから生じた悪を掘り下げてみたかった。対立する相手も、時代の犠牲者かもしれない……という観点。なので、陸情3課のフロアも、どこか刑事ドラマの “署内”の雰囲気を漂わせることになりました。 |
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――舞台の時代性、地域性からは、19世紀初頭頃の東欧も意識します。 |
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岩 考証の束縛から逃れ、物語を自由に描くうえでも、現実の歴史とは距離を置いています。ただし、建築にしても、メカにしても、当時の人間的な温かみを残したデザインには惹かれるところ、大ですね。 |
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――世界史に照らし合わせても、楽しめる部分は多いですね。 |
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岩 史実はアクセント程度として参考にしながら、そこに引っ張られすぎず、難解になりすぎないよう注意を払っています。といっても、ボク自身、世界史の成績が悪かったので、勉強し直さなきゃいけないんですけど。描き手の歴史レベルが高くないので、読みやすくなっていると、良いほうに解釈して頂ければ幸いです (笑)。 |
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――オーランド伍長を巨漢の人物としたのは、何か特別な考えがあったのですか? |
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岩 読者に強く印象づけたいというのが、ひとつの理由。それと、体は大きくても気は優しいというキャラクター、この二面性は、以前読んだ西村寿行さんの小説の登場人物に影響を受けた部分があります。巨漢でも、けっしてスーパーヒーローではない。ギリギリの闘いで生き延びてきたという、苦い経歴の持ち主なんです。 |
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――ドラマチックなセリフ、独特な読み方の単語も、物語の世界観を明確にしていますね。 |
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岩 セリフ、ネームを考えるのに時間を要しすぎて、編集の方には何かと苦労をかけています(苦笑)。最初にセリフを思いついて、そこにたどり着くよう物語を組み立てることもあるし、逆に、状況を想定して、そこでどういった言葉がやりとりされるかを考える場合もあります。 |
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――キャラクターの言葉が、状況に応じて変化し、成長を表現していくと……。 |
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岩 たとえば、アリス少尉にしても、民衆に対して甘い言葉ばかりを発していては誠意に欠ける。途中、頑張りすぎるきらいもありますが、それは周囲との関わりを見つめながらの発言ということで、緩急をつけていくつもりです。ともすれば、アリスの貴族物語や伍長の特殊部隊物語へと集約しかねないのですが、あくまで陸情3課の集団劇として、オレルドやマーチスの心の動きにも、細かく気を配っていきたいですね。 |
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――そこには、当然、組織と組織のぶつかり合いも含まれていく。 |
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岩 対立する陸情1課との確執も、ひとつの要素にはなります。ただし、1課には1課の理念、事情がある。単なる悪役としてではなく、方向性の違いからあつれきが生じる部分を描いていければと感じます。 |
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――描いている段階で、自身、楽しんでいらっしゃる部分はどこでしょう? |
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岩 オレルド准尉の気ままな行動、そのほかギャグ部分は、自分でも楽しめるよう描いています。とはいえ、常に「これでいいのだろうか?」と、自問自答しているのが現実。原稿が上がった時点で爽快感が得られると思われるかもしれませんが、印刷され、雑誌が発売されるまで、不安なものなんですよ。読者の感想を目にして、ようやく一段落という感じでしょうか。好評であれば素直に喜べますし、不満な点を指摘されれば、それへの対応を考えることができますから。 |
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――アニメ化に当たり、新鮮に受け止められた点はありますか? |
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岩 たとえば、モノの素材について。改めて問われて、逆に質感をとらえなおす場合も出てきました。また、監督をはじめ、スタッフの方たちと話をする過程でキャラクターや、彼らのセリフを分析し直すきっかけも与えられた。これはとても有意義に思います。 |
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――最後に、これからアニメをご覧になる視聴者にメッセージをいただけますでしょうか。 |
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岩 漫画と多少異なる部分が出てくるかもしれませんが、原作を尊重しながら制作を進めていただいたので、アニメ作品としての演出、アニメだからこその描写を楽しんで欲しいですね。相違点にこだわらず、ひとつの作品として、内容を率直に受け止めて頂きたい。こちらから先に感想を言うのは、良くも悪くも、皆さんに先入観を与えるので止しましょう。ボクも一視聴者として、期待とともに作品に触れることにします!
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