いよいよ最終決戦? 日本の運命はいかに?

 ついに国連によって、日本に出現する巨大ロボット攻撃のため、無人兵器禁止条約の限定的解除が承認された。それを受けて現在、日本各地の国防軍基地倉庫に封印されていた41式無人戦闘攻撃機が、次々と輸送機によって関東周辺の基地に空輸されており、またヨコスカ港などでは、海防護衛艦隊の航空母艦である赤城や瑞鶴に、無人機の搭載が行われている。

 政府発表によると、今まで日本各地に現れていたロボットは、強力なエネルギーに引きつけられる性質があるという。そこで関東で使用されている巨大な電力を、都内に建築されたエネルギータワーに集中させることによってロボットを誘い出し、総攻撃をかけるとのことだ。

 以前国防軍がロボットに攻撃を行ったとき、国防軍の戦闘機は次々と撃墜され、装備の損害だけではなく多数の人的損害を出した。そのため軍は攻撃を中止し、2体のロボットが戦っているのを、ただ眺めていることしかできなかった。そこで今回国防軍は、無人誘導兵器制限条約という「枷」を外すことにより、今までは人的被害を恐れてできなかった総攻撃を実施して、ロボットを破壊しようとしている。さらに、今まで2体のロボットのうち片方は常に生き残っていたが、今回はロボット双方を破壊することによって、以後の日本へのロボット襲撃も完全に食い止めようというのだ。

 だが、いくつもの疑念がつきまとう。

 まず、本当にこの総攻撃でロボットを破壊できるのか? 以前国防軍がロボットに攻撃を行ったときには、傷すらつけることはできなかった。そして今回の攻撃は、いくら「無人兵器を動員しての総攻撃」とはいっても、あくまで弾数が多くなるだけで、弾そのものの破壊力が上昇するわけではない。対ロボット用の特殊武器が開発されたわけではないのだ。

 そして、仮にロボットを破壊できたとして、本当にこれで日本に対するロボットの襲撃を終わりにできるのか? ロボットを2体とも潰せたとして、その次にもしまた別のロボットが1体現れたら、誰がそれと戦うのか? その時日本に戦力は残っているのか?

 そして、はたしてこの総攻撃で、市街地にどれだけの被害が出るのか? 2体のロボットが戦っているのを見ている方が、まだ被害が少ないのではないか?

 それらの疑念に対する満足な説明がなされないまま、すでに東京、神奈川全域に避難勧告が出され、首都圏からのエクソダス(旧約聖書に登場する大脱出劇のこと)が始まっている。旧約聖書のエクソダスでは、人々の目の前で海が2つに割れるという「神の奇跡」が起きたため、人々は海底を歩いて無事に逃げることができた。その後海はもとに戻り、逃げる人々を追う兵士は海に沈んだ。だが、そのような奇跡は現代に期待できるのだろうか?

 今日本を率いているのは、旧約聖書のモーゼのような預言者なのか、それとも人々をとんでもない誤りに導こうとしている愚者なのだろうか?