真実か、でっち上げか? ジアースレポート徹底検証

 ここ1週間は不意打ちの連続であった。まず古茂田議員がその存在を明らかにして国会を騒がせ、更にその後、小説家志望のT氏によって「捏造文書」と発表された「ジアースレポート」。我々マスコミの現場でも、これらの「不意打ち」のたびに上を下への大騒ぎであった。

 古茂田議員は、ジアースレポートの出所については秘匿したまま、「ジアースという怪獣内に子供がとらわれている」などという発言を行った。その時からすでに「まさか」「信じられない」という声が上がり、捏造発表記者会見が行われたときには「やっぱりか」という反応も聞かれた。

 だが、ちょっと考えてみよう。「巨大怪獣が現れた」というニュース第一報を見たとき、我々はすんなりこの話を信じたか? 確かに古茂田議員が話したジアースレポートの内容は信じがたい。だが、もし一連の事件前である今年の春に「巨大怪獣が日本に襲ってきた」という話をしたならば、その人物は「頭がおかしい」と思われていたはずだ。

 それに、ジアースリポートの内容にあったという、「御友島地震当時に、人工衛星によって巨大怪獣がすでに発見されていた」という話は、可能性としては実際にあったとしても何らおかしくはない。今や、インターネットを通じて誰でも人工衛星写真を見ることができる時代。むしろ「どうして政府は、実際に多大な被害が出るまでに、怪獣の存在に気づけなかったのか」という指摘も、すでに何度も行われていたではないか。「政府は最初から怪獣が現れることを知っていたが、いざ現れるとまともな対応をできなかったため、怪獣が知っていたことを秘匿した……」じつにありそうな話である。

 こうして考えると、確かに古茂田議員が暴露したジアースレポートの内容は驚くべきものである。だが、「怪獣が現に存在する」という事実に比べると、実はそれほど驚くべきものではない。我々は、怪獣の出現が恒常化してしまった日常に生活するうちに、「常識」というものが崩壊してしまっており、「理性的に真実を判断する」ということが難しくなっているのだ。

 さらによく考えると、もっと別に奇妙なことがあるのに気がつく。それが小説家志望のT氏による捏造発表記者会見である。
 古茂田議員が国会でジアースレポートのことを発表したのが●日。その後捏造発表記者会見が行われたのが●日。あまりにもその感覚が短い。また、この記者会見が国会の記者会見場で行われたということを考えると、国会関係者がお膳立てしたことになる。だとすると、捏造発表記者会見で語られたことが事実であるならば、

・T氏が古茂田議員にジアースレポートを提出したあと、古茂田議員が国会でジアースレポートを発表
・ジアースレポートのことで社会が騒然となる
・T氏が反響の大きさに驚く
・T氏、ジアースレポートの撤回を古茂田議員に頼むが、拒否される
・T氏、別の国会関係者に事態を相談
・国会関係者が、ジアースレポートの内容を検証して捏造だと判断
・国会の記者会見場をおさえ、記者を集めて記者会見を開催

 これらがわずか数日のうちに行われたことになるが、あまりにも時間が短すぎる。前号からのくり返しになるが、T氏は何の肩書きも役職も名声も持たない、無名の「小説家志望の男」なのである。にもかかわらずこれほど政府機関が迅速に動いているということは、ジアースレポート内容の真偽は別として、少なくとも「ジアースレポートが偽物であってほしい政府の意向」が動いていると考えざるを得ない。

 もちろんこれらの話は、「ジアースレポートが本物である」という証明にはならない。だが、「ジアースレポートが偽物である」という証明もできないのだ。とりあえずは捏造発表を受けての、古茂田議員の反応が注目されるところである。