夏のスポーツ特集C トランポリン王子物語

 女子の活躍ばかりが目立つ昨今のスポーツ界だが、もちろん男子選手の活躍がないわけではない。近頃は特に「○○王子」の愛称で呼ばれる10代のアマチュア選手の台頭が著しいところ。その競技に興味が薄い人であっても名前は知っているくらい、連日の報道に力が入れられていることはご存知の通りだ。そしてまた、新たな“王子”の出現がTVや新聞紙上を賑わしている。「トランポリン王子」こと、藤村虎男(16)である。

 そもそもこの藤村君、熱狂的野球ファンの父親によって愛する球団の名前をつけられてしまったという、ある意味ではカワイソウな少年だ。そんな父親に反発するかのごとく、彼は野球を始めることなく、それどころかスポーツ全般に興味を示すことなく幼少時代を過ごしていた。幼稚園時代の彼が特に好んで見ていたのは、TVの特撮ヒーロー番組だった。それ自体は普通の子供と特に変わるところはないが、ちょっとだけ他の子より強い関心を持ってヒーローものを見ていた彼は、やがて自分もヒーローになりたい!と夢を見るようになる。そのために、小学校に入ってから始めたのがトランポリンだった。名前が“虎男”で“トラ”ンポリンとはまるでダジャレのようだが、当時の彼は特に気づいていなかったと、自身のブログにてコメントしている。ただ純粋に、誰よりも高く空中を飛んで、自由に舞ってみたいという憧れだけがあったそうだ。そして、中学時代から各種大会に出場し始め、頭角を現すようになった彼は、その甘いマスクと瑞々しい笑顔の爽やかさから、いつしか「トランポリン王子」として人気を集めるに至った。もちろん人気だけでなくその実力は折り紙付きで、将来の五輪代表の最有力候補に挙げられている。

 それにしても、いつまでこの王子ブームは続くのか? 実力以上にルックスが求められるとは、これからの男子スポーツ選手はさぞかし苦労の多いことだろう。