夏本番直前特集 あなたの知らないような世界……
7月も半ばとなり、学生はそろそろ夏休みに突入する頃だろう。青春真っ盛りな若者たちは、きっと毎日これでもかと遊びまくるんだろうね。いいよね、学生さんは夏休みがあって。こちとら、お盆進行で休んでる場合じゃないっての。いい気になってるのも今のうちだぞコンチクショウ……。
と、のっけから愚痴をこぼしてしまって大変失礼したが、何が言いたいかというと、夏だからって浮かれて遊ぶのは大変結構なことだけど、このシーズンは危険な落とし穴があちこちにあるから充分気をつけなさいよ、ということだ。
これは、本誌記者の知人が実際に体験した話。その年の夏も、ちょうど今みたいに暑くてたまらなかったらしい。しかも、その頃はまだクールビズなんて流行っていなかったから、営業で外回りとなるとビシッとスーツを着込んでいかなきゃいけないから、余計に暑苦しいったらありゃしない。ただひとつだけ幸いだったのが、彼の受け持ち区域が海の側だったこと。海水浴場として有名なところだけど、地元民ならではの有利さで人が滅多に来ない場所を知っていたから、そこに涼みに行ってはよくサボっていたそうだ。
でもやっぱりね、あまりサボってばかりだと罰が当たるのか、ある日、いきなりザーッと大雨が降ってきたことがあったんだね。当然、すぐさま彼は近くの洞窟まで雨宿りのために駆け込んだよ。そうしたらね、異常なくらいに寒気を感じたんだって。雨で体が冷えたせいかとも思ったけど、それにしては体の芯から冷たくなって、奥歯の震えもガタガタと止まらない。あまりに気味が悪くなったものだから、雨がやむ気配もないけれど、彼はすぐさま出て行こうと思ったんだね。
その時だった。洞窟の奥からヒソヒソと話し声が聞こえてきたのは。何を話しているかは雨音でかき消されてはっきりとは聞き取れないが、そのうちに声がだんだんと自分のほうに近づいてくるのだけはわかった。身の危険を感じた彼は慌てて駆け出す。すると、声の主らしき気配も、自分の後を追うようにして駆け出してきた。必死で逃げた彼だが、洞窟の入り口にたどり着くか着かないかのところで追いつかれ、左肩をガシッとつかまれた。
「――――――っ!!」
声にならない叫び声を上げた彼は、思わずその場にへなへなと座り込んでしまう。時間にすればほんの数秒だとは思うが、彼にとっては長く感じられる空白があって、やがて恐る恐る振り返ってみると、そこには人どころか猫の子一匹いやしなかった。幽霊の正体見たり、何とやら。なんだ、気のせいだったのかと彼はホッと一息ついて、その場は無事に仕事へと戻ったそう。
ところが、真の恐怖は家に帰ってからだった。スーツを脱いで、よく見てみると、左肩のところにうっすらと手形のようなものが付いていた。それも、まるで血の色のように赤みがかっている。どうして? あの場には誰もいなかったはずなのに? 第一、あれだけの激しい雨の中で手形が流されていないのは何故??
いくら考えても答えは出てくるはずもない。とりあえず、彼はそのスーツを近くのお寺で丁寧にお炊き上げしてもらい、それからは何事もなく暮らしているそうだ……。
どこに危険が潜んでいるのかわからない今の世の中、夏の行楽地に出かけるときは、くれぐれも見知らぬ場所には近づかないようにしておきたい。
7月も半ばとなり、学生はそろそろ夏休みに突入する頃だろう。青春真っ盛りな若者たちは、きっと毎日これでもかと遊びまくるんだろうね。いいよね、学生さんは夏休みがあって。こちとら、お盆進行で休んでる場合じゃないっての。いい気になってるのも今のうちだぞコンチクショウ……。
と、のっけから愚痴をこぼしてしまって大変失礼したが、何が言いたいかというと、夏だからって浮かれて遊ぶのは大変結構なことだけど、このシーズンは危険な落とし穴があちこちにあるから充分気をつけなさいよ、ということだ。
これは、本誌記者の知人が実際に体験した話。その年の夏も、ちょうど今みたいに暑くてたまらなかったらしい。しかも、その頃はまだクールビズなんて流行っていなかったから、営業で外回りとなるとビシッとスーツを着込んでいかなきゃいけないから、余計に暑苦しいったらありゃしない。ただひとつだけ幸いだったのが、彼の受け持ち区域が海の側だったこと。海水浴場として有名なところだけど、地元民ならではの有利さで人が滅多に来ない場所を知っていたから、そこに涼みに行ってはよくサボっていたそうだ。
でもやっぱりね、あまりサボってばかりだと罰が当たるのか、ある日、いきなりザーッと大雨が降ってきたことがあったんだね。当然、すぐさま彼は近くの洞窟まで雨宿りのために駆け込んだよ。そうしたらね、異常なくらいに寒気を感じたんだって。雨で体が冷えたせいかとも思ったけど、それにしては体の芯から冷たくなって、奥歯の震えもガタガタと止まらない。あまりに気味が悪くなったものだから、雨がやむ気配もないけれど、彼はすぐさま出て行こうと思ったんだね。
その時だった。洞窟の奥からヒソヒソと話し声が聞こえてきたのは。何を話しているかは雨音でかき消されてはっきりとは聞き取れないが、そのうちに声がだんだんと自分のほうに近づいてくるのだけはわかった。身の危険を感じた彼は慌てて駆け出す。すると、声の主らしき気配も、自分の後を追うようにして駆け出してきた。必死で逃げた彼だが、洞窟の入り口にたどり着くか着かないかのところで追いつかれ、左肩をガシッとつかまれた。
「――――――っ!!」
声にならない叫び声を上げた彼は、思わずその場にへなへなと座り込んでしまう。時間にすればほんの数秒だとは思うが、彼にとっては長く感じられる空白があって、やがて恐る恐る振り返ってみると、そこには人どころか猫の子一匹いやしなかった。幽霊の正体見たり、何とやら。なんだ、気のせいだったのかと彼はホッと一息ついて、その場は無事に仕事へと戻ったそう。
ところが、真の恐怖は家に帰ってからだった。スーツを脱いで、よく見てみると、左肩のところにうっすらと手形のようなものが付いていた。それも、まるで血の色のように赤みがかっている。どうして? あの場には誰もいなかったはずなのに? 第一、あれだけの激しい雨の中で手形が流されていないのは何故??
いくら考えても答えは出てくるはずもない。とりあえず、彼はそのスーツを近くのお寺で丁寧にお炊き上げしてもらい、それからは何事もなく暮らしているそうだ……。
どこに危険が潜んでいるのかわからない今の世の中、夏の行楽地に出かけるときは、くれぐれも見知らぬ場所には近づかないようにしておきたい。
(C)2007 鬼頭莫宏・小学館/イズミプロジェクト
注)このサイトはアニメ版「ぼくらの」のプロモーションサイトです。
協力:小学館 月刊コミックIKKI編集部
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