高まるアメリカと中国の軍事的緊張
無人兵器禁止条約で有利な立場を得た中国軍
昨年11月に発生した米中の潜水艦衝突事件は、アメリカと中国という21世紀の世界超大国の「冷戦(Cold War)」が、
海面下では「熱い戦い(Hot War)」として行われていたことを示した一件であった。
だが実際には、米中の軍事的緊張は、その遥か以前から存在し、現在もなお進行中である。
昨年4月の台湾総統選にあわせた中国軍の示威行動を警戒して、アメリカは空母を台湾沖に遊弋させた。
だが選挙終了後もアメリカの空母艦隊が、台湾近海や東シナ海でたびたび活動している。これを「歓迎」するために出撃した中国軍の航空機とアメリカ海軍機のニアミスは、報道されていないものも含めると相当な数になっていることが、昨年度のアメリカ海軍の報告書より判明した。
アメリカが、資源問題などで周辺諸国に圧力をかける中国政府に対し、牽制および情報収集活動を頻繁に行っている結果だが、アメリカの行動には時に焦りすら感じられる。ここでポイントとなるのが、○○年に締結された無人兵器禁止条約である。
無人兵器の武装を禁じた無人兵器禁止条約は、元来「戦争が人間の手を介さずに進行し、ロボットが人間を殺してゆく」という、SF映画のような終末世界を避けるために締結されたものだった。
そしてこの条約は、「人の命は等しく尊い」という前提のもとに締結された条約だが、そもそもこの大前提自体が間違っている。
仮に戦争になった場合、中国には世界最大の膨大な人的資源があり、物理的に耐えられる死傷者数は他国に比べて抜きん出ている。さらに、多少の戦死者でもアメリカや他の民主主義各国では政治的問題を引き起こすものだが、言論の自由や政府批判が許されていない中国ではそんな心配もない。
かつて中国軍は、朝鮮戦争において人海戦術を行った。中国の大軍は半島を席巻したが、当時の中国軍は国連軍に比べると装備的に劣っていたため、国連軍を完全に半島から駆逐することはできなかった。
だが現在、中国は経済のIT化などをもとにして軍の急速な近代化を進め、先進国との格差はどんどん縮まっている。一方でアメリカは、世界でもっとも自動兵器の研究を推し進めていたという優位性を、無人兵器禁止条約によって手放してしまった。その結果、アメリカは中国軍に圧倒される恐怖を日増しに強く感じることになったのである。
また、この話はアメリカに限ったことではない。近年、中国軍の活発化にあわせ、日本空軍のスクランブル回数も急激に上昇している。そのたびに人間のパイロットが乗った戦闘機が出撃し、たとえ戦闘がなかったとしても、事故でパイロットを失う危険性が増えてゆくのだ。また、それらのパイロットを育成する課程でも事故は発生しており、そのたびにパイロットの命が危険にさらされている。
人が人を殺すのと、ロボットが人を殺すのと、はたしてどちらが人道的と言えるだろうか。
無人兵器禁止条約で有利な立場を得た中国軍
昨年11月に発生した米中の潜水艦衝突事件は、アメリカと中国という21世紀の世界超大国の「冷戦(Cold War)」が、
海面下では「熱い戦い(Hot War)」として行われていたことを示した一件であった。
だが実際には、米中の軍事的緊張は、その遥か以前から存在し、現在もなお進行中である。
昨年4月の台湾総統選にあわせた中国軍の示威行動を警戒して、アメリカは空母を台湾沖に遊弋させた。
だが選挙終了後もアメリカの空母艦隊が、台湾近海や東シナ海でたびたび活動している。これを「歓迎」するために出撃した中国軍の航空機とアメリカ海軍機のニアミスは、報道されていないものも含めると相当な数になっていることが、昨年度のアメリカ海軍の報告書より判明した。
アメリカが、資源問題などで周辺諸国に圧力をかける中国政府に対し、牽制および情報収集活動を頻繁に行っている結果だが、アメリカの行動には時に焦りすら感じられる。ここでポイントとなるのが、○○年に締結された無人兵器禁止条約である。
無人兵器の武装を禁じた無人兵器禁止条約は、元来「戦争が人間の手を介さずに進行し、ロボットが人間を殺してゆく」という、SF映画のような終末世界を避けるために締結されたものだった。
そしてこの条約は、「人の命は等しく尊い」という前提のもとに締結された条約だが、そもそもこの大前提自体が間違っている。
仮に戦争になった場合、中国には世界最大の膨大な人的資源があり、物理的に耐えられる死傷者数は他国に比べて抜きん出ている。さらに、多少の戦死者でもアメリカや他の民主主義各国では政治的問題を引き起こすものだが、言論の自由や政府批判が許されていない中国ではそんな心配もない。
かつて中国軍は、朝鮮戦争において人海戦術を行った。中国の大軍は半島を席巻したが、当時の中国軍は国連軍に比べると装備的に劣っていたため、国連軍を完全に半島から駆逐することはできなかった。
だが現在、中国は経済のIT化などをもとにして軍の急速な近代化を進め、先進国との格差はどんどん縮まっている。一方でアメリカは、世界でもっとも自動兵器の研究を推し進めていたという優位性を、無人兵器禁止条約によって手放してしまった。その結果、アメリカは中国軍に圧倒される恐怖を日増しに強く感じることになったのである。
また、この話はアメリカに限ったことではない。近年、中国軍の活発化にあわせ、日本空軍のスクランブル回数も急激に上昇している。そのたびに人間のパイロットが乗った戦闘機が出撃し、たとえ戦闘がなかったとしても、事故でパイロットを失う危険性が増えてゆくのだ。また、それらのパイロットを育成する課程でも事故は発生しており、そのたびにパイロットの命が危険にさらされている。
人が人を殺すのと、ロボットが人を殺すのと、はたしてどちらが人道的と言えるだろうか。
(C)2007 鬼頭莫宏・小学館/イズミプロジェクト
注)このサイトはアニメ版「ぼくらの」のプロモーションサイトです。
協力:小学館 月刊コミックIKKI編集部
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